審美歯科(Esthetic Dentistry)とは 

高木幸人(山形市/高木歯科医院院長)


 昔は「金持ちの印」みたいに、獅子舞のごとく前歯にも金歯を光らせている人も見かけましたが、いまではほとんど見かけることはありません。

 僕が歯科大学の学生の時、「歯科用の金合金のメリットは?」という教授の問いに、同級生のS君が堂々と「見た目が良い!」と答えて、失笑をかったことを思い出しました。二十年以上前のことですが…。いまでは「金歯は見た目が悪い」のが当たり前の時代になりました。

 歯は、なるべく白い方がよいというのが一般社会の常識です。いや、「白い」というのはちょっと変です。自然な歯の色は、決して雪や画用紙のような白ではなくて、幾分黄色みがかった透明感のある色調をしていますから、歯はなるべく自然な色調で、というのが適切でしょう。

 少しでも自然な色調で人工の歯を作る試みが近代歯科の大きなテーマでもあります。セラミックを使うことで、より自然な色調でつめたり、かぶせたりすることができるようになりました。しかもセラミックは生体に害がなく、長期的に口の中に入っていても化学的な変化を起こさないという特長を持っています。

 ところが、セラミックというのは加工が難しいことと、硬くてもろいという欠点があります。セラミックの硬さは、もし不適合な場合に自然に減ってうまく調整できるということがなく、あわないまま口の中に入っていると歯をだめにするばかりか、顎の関節にもダメージを与えることもあり得ます。そのために、歯を作る技工の仕事はとても精密で、他の技工作業に比べてとても手間がかかります。当然、歯科技工士の腕がとても重要になってきます。また本物の歯とそっくりに作るためには、芸術家にも似たセンスも要求されます。(参照→歯科技工士について)

 

◆ラミネートベニア

 ムシ歯にプラスチックをつめても、しだいに変色して見た目が悪くなることがあります。このようなときにはつめ直しをすればよいのですが、継ぎ接ぎだらけでますます見た目が悪くなることもあります。こうしたケースでは、歯の表面のエナメル質を0.5mm程度薄く削って、セラミックのシェルを貼りつけるラミネートベニア法が審美的な改善をする目的で応用されます。

 最近では歯質とセラミックを強固に接着できるセメントが開発され、世界中で広く行われるようになりました。セラミックの審美性と耐久性により、プラスチックの充填などに比べてより美しく、寿命の長い修復方法です。

 削るのはエナメル質のごく表層のみで、あまり歯を削らなくてもよいということに大きな意義がある治療法です。「人工エナメル質治療」とも呼ばれています。

 ある程度の歯並びの修正や、歯と歯の隙間の閉鎖の治療にも応用されます。先天性や薬物などで歯が変色していているのを、ラミネートベニアによってうつくしい白い歯にすることも可能です。

 

◆セラミッククラウン

 重度な変色歯で、薄いラミネートベニアでは黒ずんだ歯の色が透けて十分に改善できないような場合や、歯並びや歯の形態を大幅に修正したいときには、歯にセラミックをかぶせます。また、ムシ歯などで歯質の量が少なくなったときには、金属や硬質のプラスチックで土台を補強してセラミッククラウンをかぶせます。

 セラミッククラウンによって、歯の色や形を患者さんの希望にあわせてある程度アレンジできますから、歯の色や歯並びにコンプレックスのある人は、一度歯科医院で相談してみるとよいでしょう。腕の良い歯科医と、センスのある歯科技工士によるセラミックの修復は、ふつうではそれが作り物であることがまったくわからないように治療されます。

 セラミッククラウンには、セラモメタルクラウン法(金属にセラミックを焼き付けて作る方法)と、オールセラミッククラウン法(すべてセラミックで作る方法)のふたつがあります。金属に焼き付けるセラモメタルクラウンの方が、歯に対して適合性が向上しますが、オールセラミッククラウンの方がより審美性を高めることが可能です。症例によって選択されます。また、セラモメタルクラウンで使われる金属も、質の高い金合金でなければなりません。ニッケルクロム合金にセラミックを焼き付けたものも結構多くみられますが、適合性はずっと悪くなりますし、金属の劣化も心配です。

 セラミックを使った治療は、健康保険の対象外です。しっかり担当のドクターと相談すべきです。

 セラミックのかぶせものでも、適合が悪かったり、粗悪な材質のものだったり、しっかりプラークコントロールができていないときに作ったりすると、歯と歯肉の境目が黒くなる(ブラックマージンと呼ばれる)ことがあります。


高木幸人著「スーパーデンティストをさがせ!」(現代書林/1998.5)より


誤解しないで!審美歯科

セラミックを貼りつけたり、かぶせたりすることが審美歯科だと誤解されがちですが、それは手法であって審美歯科の本質とは異なります。仮に高価なセラミックをかぶせたとしても、歯並びや口唇の形、顔の色や形などとの調和が取れていなくては、「いかにも作りものの歯」になってしまいます。また、歯肉が歯周病などで赤く腫れているようでは、どんなにきれいな歯が入っても審美製の回復とはいえません。喫煙者によく見られるのですが、歯肉や歯の表面がヤニで黒ずんでいるのも見た目が悪いものです。

審美歯科とは、歯の治療を通して「いきいきとした表情」を作ることを目的にしています。そのためには心身ともに朗らかで健康であることが大切です。言い換えれば、「笑顔を作ること」なのです。歯は顔を作り、顔は表情を作ります。そして表情は人生を作ることにもなるのです。

審美歯科とは、あなたの豊かな人生を作るために、歯科医ができる一分野です。でも、とても難しい・・・・。