歯科インプラント治療インプラント義歯)の実際

高木幸人(山形市開業/高木歯科医院)


   歯にはものを噛むということの他に、発音や表情を整えるという働きがある。虫歯や歯周病で歯を失ったり、先天的に歯が欠損している場合には、機能回復のために義歯を入れることになる。従来は隣接する歯を支えにしてブリッジにしたり、取り外し式の入れ歯(有床義歯)によって欠損した部分を補っていた。しかし、隣接する歯を削ることのリスクや取り外しの不便さなどから、最近では人工歯根を埋め込むインプラント義歯による修復が多く行われるようになった。

 ◆インプラントとは、生体になじみの良いチタンやセラミック製の人工の歯根を、もともと歯があった顎骨に埋め込み、その上に義歯を固定する治療法で、乳歯、永久歯に続く“第三の歯“とも呼ばれている。

 症例1は、17歳の高校生の女性の患者さん。下の犬歯が先天的に欠如していた。欠損部にインプラントを植立し支台を取りつけ、セラミックによる義歯をかぶせた。顎の骨や歯肉が健康な場合には、このように天然の歯とおなじように自然に修復することが可能だ。そして両隣の歯をまったくいためずに欠損部を補うことができるということが、インプラントの最大の効果でもある。

症例1 治療前 治療後

 症例2は、60歳の女性。下顎の奥歯がない。これまで取り外し式の入れ歯を作ってもらったが、違和感が強くて馴染めず、ほとんど使ったことがなかった。歯のなくなったところにインプラントを埋め込み、セラミックブリッジを装着した。自分の歯とおなじように硬いものでも何でも噛めて、取り外しのわずらわしさなどなく快適な義歯である。

症例2治療前治療中治療後

 

   ◆歯を失った顎骨は、次第に痩せていく傾向がある。咀嚼時の圧力が歯を介して顎骨に適度な刺激となって伝達され、骨の代謝が積極的に営まれるのだが、咀嚼圧を伝達する歯がなくなることで、骨の活性は極端に低下するのである。インプラントをすることによって、顎骨の痩せるのを防ぐこともでき、ひいては顔貌の変化を防ぐこともできる。

 ◆インプラントは手術によって顎骨に埋入されるが、たいていは外来処置で、親知らずの抜歯に比べれば身体が受けるダメージは一般に少ない。とはいうものの、インプラント治療は無菌状態で行われなければならず、高度な技術も必要であり、専門医に行ってもらうことが望ましい。そしてインプラント義歯を長期的に快適に使っていくためには、なによりも入れた後の自分の手入れが大切。

 インプラントは虫歯にはならないが、ブラッシングが悪ければ容易に歯周病に罹患するからである。そして歯をなくしてしまう人はもともと歯の手入れがヘタだから、なおさら気をつけなければならない。

 ◆安直にインプラント治療を受けて、思ったような効果が得られなかったという患者さんも少なくない。時間と費用がかかる治療だけにインプラントに対する批判がないわけではない。しかし歯科医学と科学の進歩によって生まれた最新の治療の恩恵を受けている患者さんは急増しているのが現実である。十分にその治療内容を知り、納得してから治療を受けることがだいじである。

高木幸人(山形市開業/高木歯科医院


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